有限会社の同一管内かつ定款変更を要しない本店移転登記が、先日完了しました。この登記自体は特筆すべきものではありませんが、新会社法施行後はどのように変わるか見てみます。

まず、現行法では、

• 有限会社法第26条には、「取締役数人アル場合ニ於テ定款ニ別段ノ定ナキトキハ会社ノ業務執行ハ取締役ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス　支店ノ設置、移転及廃止並ニ支配人ノ選任及解任亦同ジ」とあります。
• 有限会社の添付書面の通則である商業登記法第26条第1項には、「---申請書に社員総会の議事録又はある取締役若しくは清算人の一致があったことを証する書面を添付---（一部抜粋）」と規定されています。

したがって、取締役が複数名いる本件では、「取締役の一致があったことを証する書面」として、取締役決議書を添付(注)1しました。

現行有限会社は、新会社法施行後は、「特例有限会社」という特殊な株式会社として存続します(整備法2、3)。それでは、新会社法施行後は、

• 業務の執行を規定した新会社法第348条は(注)2、「①取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社（取締役会設置会社(注)3を除く。以下この条において同じ。）の業務を執行する。②取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。」とあります。
• 添付書面の通則である改正商業登記法第46条第1項には、「---ある取締役若しくは清算人の一致を要するときは、申請書にその同意又は一致があったことを証する書面を添付---（一部抜粋）」と規定されています。

長々と書きましたが、結局特例有限会社の本店移転の添付書類は有限会社時代と変わらないといえます。

なお、特例有限会社も株式会社である以上、定款に具体的な本店所在地まで定めているケースでは、本店の所在地の変更決議をした株主総会議事録を添付(注)4することになります。

(注)1 『定款の変更を伴わない有限会社の本店移転登記の申請書には、当該会社の取締役が一人であれば商業登記法第94条に規定する「ある取締役の一致があったことを証する書面」の添付を要しない。』との質疑応答(登研372.83)がありますが、実務では、申請人の意思を明確にするために、取締役決定書を添付するのが一般的です。

(注)2 特例有限会社には、重要事項の決定を各取締役に委任することを禁じた、新会社法第348条第3項の規定の適用がありません(整備法21)。

(注)3 特例有限会社には、定款の定めによっても、取締役会を置くことができません（整備法17①）。

(注)4 加えて、株主リスト（商登規61条3項）の添付が必要になりました。−平成28.10.1付商登規則の一部改正に対応−