2007年04月21日
休眠抵当権の抹消
事実上効力を失った古い担保権を休眠担保権と呼びます。都会では滅多に遭遇しませんが、現在でもかなりの数が残っていると言われています。その数400万個とも!
弁済供託による休眠担保権の抹消登記について知りたい方はこちらへ
先日、所有者の代理人弁護士を介して、判決による休眠抵当権の抹消登記の依頼を受けました。その判決書には、「主文」及び「事実及び理由」の記載中に登記原因となるべきものがないので、申請書には、登記原因として「判決確定の日 判決」と記載し、登記原因証明情報として判決正本と確定証明書を添付しました。参考までに、原告の主張の概要は次のとおりです。
- 本件抵当物件は、原告の所有(▼画像中の「所有権移転」)である。
- 本件抵当権(▼画像中の「抵当権設定」)は、被担保債権の弁済期日である昭和52年6月8日の翌日から20年を経過した平成9年6月9日に時効消滅した。
- 被告は、本物件について抵当権実行による競売を申立てた(▼画像中の「任意競売申立」)が、被告が費用を予納しないため競売手続が中断し、以後被告は、現在まで28年以上所在不明である。
- かかる競売申立て行為による時効中断効は生じないから、本件の被担保債権は、弁済期日である昭和52年6月8日の翌日から10年を経過した昭和62年6月9日に時効消滅した。
- 原告は、本訴において上記2、4の消滅時効を援用する。
- 原告は被告に対し、所有権に基づき抵当権設定登記の抹消登記手続を求める。
任意競売申立の登記は、担保権の登記抹消後の登記事項証明書を裁判所に提出すれば、裁判所書記官の嘱託により抹消されます(民事執行法183条1項4号2項、188条、54条)。
― 参照条文・判例・先例 ―
- 判決に基づき登記申請する場合の登記原因は、判決書に原因の記載があるときはその原因により、その記載がないときは「判決」とする(昭和29年5月8日民事甲第938号回答)。
- 債務者・抵当権設定者以外の抵当不動産の第三取得者・後順位抵当権者に対しては、抵当権は債権から独立して20年の消滅時効にかかる(大判昭和15年11月26日)。
- 抵当権実行のためにする競売法による競売は、被担保債権に基づく強力な権利実行手段であるから、時効中断の事由として差押と同等の効力を有する(大判大9年6月29日)。
- 申立人が費用を予納しないときは、執行裁判所は、民事執行の申立てを却下し、又は民事執行の手続を取り消すことができる(民事執行法14条4項)。
- 差押え、仮差押え及び仮処分は、権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときは、時効の中断の効力を生じない(民法154条)。
- 抵当不動産の譲渡を受けた第三者は、抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる(最判昭和48年12月14日)。
休眠担保権の抹消登記は、以下の要件を満たせば、本件のように判決に依らなくても、所有者が単独で申請することができます(不動産登記法70条3項後段)。
⑴登記義務者が行方不明であること
▶担保権者が個人の場合は、「弁済受領催告書」を配達証明書(または「本人限定郵便」)付書留で送付し、「宛所に尋ねあたらず」で返送された封筒を添付する。
⑵被担保債権の弁済期から20年経過していること
▶弁済期が記載された「閉鎖登記簿謄本」を添付するが、その記載がない場合は、弁済期の定めがないものとして、債権成立の日(もしくは設定の日)を債権の弁済期とする。
▶昭和39年改正法施行後にされた抵当権の登記の場合は、当該登記に弁済期の記載がなく、登記簿から弁済期を確認できないため、申請人作成の申述書(印鑑証明書付)を添付する。
⑶元本、利息、遅延損害金の合計金額を供託すること
【本件の供託金額】
契約日 昭和52年3月8日
弁済期 昭和52年6月8日
債権額 1,200,000円>
利 息 日歩4銭1厘
損害金 日歩8銭2厘※
利息金額 1,200,000×0.041/100×(契約日〜弁済期の日数)
損害金額 1,200,000×0.082/100×(弁済期の翌日〜供託日の日数)
供託金額 2007.4.21現在 11,980,212円
※損害金は、平成12年6月1日前の契約なので利息の2倍まで可(平成11年12月17日法律第155号)
(注)1 供託金の計算は、法務省民事局で無償提供している、「遅延損害金ソフトウェア」の使用をお勧めします。ちなみに、法務局でもこれを使って計算しています。
(注)2 休眠担保権抹消のための供託申請手続については、こちらをご覧ください。
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