2007年05月21日
補欠監査役
現在、「補欠監査役」という用語は二つの意味で用いられています。一つは、監査役が任期の満了前に辞任等で退任した場合に、その補欠として選任され就任した監査役ということ。もう一つは、監査役の定員を欠いた場合に備えて、あらかじめ選任された監査役ということです。要するに、前者の監査役は正規のそれであるのに対して、後者はいわゆる「控えの選手」です。ここからは説明の都合上、前者の監査役を「補欠監査役」といい、後者のそれを「予選監査役」といいます。
補欠監査役については、その任期(注)1についての質問をよく受けますが、監査役が複数いる株式会社だけでなく監査役1名の株式会社においても、会社法336条3項の規定に基づく定款規定(▼「定款抜粋」33条2項)があれば、前任者の任期の満了する時までとなります(登研700.7834参照)。なお、補欠監査役は、単に後任者として監査役に選任されただけでなく、前任者の補欠である旨が株主総会議事録等に明確にされている必要があります(▼「選任議案例」)。
(注)1 監査役の任期は、取締役と異なり(会社336条1項ただし書き)、定款又は株主総会の決議によって短縮することができません。補欠監査役の任期の短縮を認める会社法336条3項は、その特則を定めたものです。ちなみに、監査役の任期の伸長は、取締役同様、非公開会社に限って10年まで認められます(会社332条2項、336条2項)。
−定款抜粋−
(監査役の任期)
第33条 監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 任期満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期は、退任した監査役の任期の満了すべき時までとする。
3 会社法第329条第2項に基づき選任された予選監査役の選任決議が効力を有する期間は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会開始の時までとする。
−選任議案例−
第3号議案 監査役1名選任の件
議長は、監査役 法務太郎氏より本株主総会終結の時をもって辞任の申出があったため、その補欠として法務花子氏の選任を願いたい旨を述べ、その賛否を議場に諮ったところ、異議なく賛成多数により選任可決した。なお、被選任者は、その就任を承諾した。
予選監査役は、旧商法時代は定款の規定が必要とされていましたが、会社法では定款の規定は不要とされています(会社329条2項)。また、予選監査役の選任の決議については、会社法施行規則96条2項において、決議事項が具体的に定められており、選任決議の取消し方法をあらかじめ決議しておけば、株主総会の決議によらずに、その決議で決まった方法で取消しすることもできます(同項6号)。
−選任決議の有効期間−(施行規則96条3項)
原則 決議後最初に開催する定時株主総会の開始の時まで
例外 定款の定めにより延長可能(▲「定款抜粋」33条3項)
→延長しても株主総会の決議で短縮可能
監査役の任期は、就任日ではなく選任日を起算点とし(会社336条1項)、予選監査役の任期についても、補欠として選任された株主総会の時から起算されます。
−予選監査役の就任−
登記の原因 《就任年月日》就任
※任期は選任時(就任前)から開始
添付書類 (前任者の)辞任届・株主総会議事録・就任承諾書
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