再生計画による資本減少 : 安達司法書士.comブログ

2010年01月09日

再生計画による資本減少

早いもので、このブログをはじめてから5回目の新年を迎えることができました。これからも訪問者の皆様に少しでもお役に立てるような情報を提供できればと思います。今後ともよろしくお願いいたします。


さて、今年最初の依頼は、民事再生手続中である株式会社(以下「再生債務者」といいます)の本店及び支店移転登記(何れも同一管轄内の移転)でした。経費節減の見地からより安いオフィスに移ることになったのです。当該登記は、通常の株式会社のケースと変わらず、当事者が取締役会議事録を添付して申請します。ちなみに、登録免許税は本店分が6万円、支店分が9,000円(登税法別表第一第24号(一)ヲ、(二)イ)、別途本支店一括登記の手数料が600円(登記手数料令第12条)です。


本件はこれで終わりではありません。再生債務者の再生計画の認可決定確定が今月末に予定されており、これに伴い、再生計画に規定された内容に従い資本金の額の減少を行うこととなっているからです。実は、この件に関しては再生債務者の担当者から質問を受けていますが、『変更登記は裁判所からの嘱託ではなく再生計画認可の決定書を添付して申請するはずですが…法務局に一応確認してみます』と回答を保留。


そんな訳で、大阪法務局に照会したところ、専門書のような回答をいただきました。関連条項とともに回答要旨を以下に記しますので、参考にしてください。

回答要旨

再生債務者における資本の減少は、株主総会の特別決議及び債権者保護手続等の会社法の資本減少手続を経ることなく、民事再生法166条1項の裁判所の許可を得て、同法174条1項の裁判所の再生計画認可によってできるとされており、民事再生計画による資本の減少の変更登記は、通常の資本金の減少登記と同じく再生債務者が登記申請することになり、申請書には、再生計画認可の決定書の謄本を添付することになります(民事再生法183条4項7項、176条)。
なお、民事再生計画による資本の減少の変更登記は、再生計画認可の嘱託登記がなされた後で登記申請することになります。

平成12.3.31民四第802号民事局長通達参照

再生計画認可の登記記録例

 民事再生

平成22年1月27日大阪地方裁判所の再生計画認可決定確定

平成22年 1月29日登記 

民事再生法(抜粋)

(再生計画の条項)

第154条

   3  第166条第1項の規定による裁判所の許可があった場合には、再生計画の定めによる再生債務者の株式の取得に関する条項、株式の併合に関する条項、資本金の額の減少に関する条項又は再生債務者が発行することができる株式の総数についての定款の変更に関する条項を定めることができる。

(再生債務者の株式の取得等に関する定め)

第161条

   3  再生計画によって株式会社である再生債務者の資本金の額の減少をするときは、会社法第447条第1項各号(資本金の額の減少)に掲げる事項を定めなければならない。

(再生債務者の株式の取得等を定める条項に関する許可)

第166条 第154条第3項に規定する条項を定めた再生計画案を提出しようとする者は、あらかじめ、裁判所の許可を得なければならない。

(再生計画の認可又は不認可の決定)

第174条 再生計画案が可決された場合には、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。

(再生計画の効力発生の時期)

第176条 再生計画は、認可の決定の確定により、効力を生ずる。

(再生計画により再生債務者の株式の取得等がされた場合の取扱い)

第183条

   4  第154条第3項の規定により再生計画において資本金の額の減少に関する条項を定めたときは、認可された再生計画の定めによって、資本金の額の減少をすることができる。この場合においては、会社法第449条(債権者の異議)及び第740条(債権者の異議手続の特則)の規定は、適用しない。

   7  第2項、第4項又は前項の規定により、認可された再生計画の定めによる株式の併合、資本金の額の減少又は定款の変更があった場合には、当該事項に係る登記の申請書には、再生計画認可の裁判書の謄本又は抄本を添付しなければならない。


今年もまた色々頭を悩ませる案件と向き合うことになりそうです。

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