新設分割の計算 : 安達司法書士.comブログ

2010年05月12日

新設分割の計算

合併や会社分割のような企業再編に携わると、会計の専門家でない司法書士であっても、会計処理の基礎的知識を求められる場面に結構出くわします。


現在新設分割の案件を受託していることもあり、会社計算規則(以下「規則」といいます)の条項中、新設分割設立会社(以下「新設会社」といいます)の株主資本に関係する条項の要点を、当方が理解する範囲で以下にまとめてみました。いくらかでも参考になれば幸いです。


  • 分社型新設分割(以下「物的分割」という)においては、新設会社は分割会社の100%子会社であり共通支配下(同一企業グループ内)の取引となるため、規則49条1項も承継される資産および負債は承継時の帳簿価額で計上すること(持分プーリング法)を基本としている。
  • 新設会社の資本金及び資本剰余金の額は、承継純資産額(株主資本等変動額)の範囲内で新設分割計画に従い定めた額であるが、例えば、承継純資産額が1億円の場合、資本金及び資本準備金の額をそれぞれ1000万円と0円とし、残りの9000万円をその他資本剰余金に計上することもできる(会社法445条5項、規則49条2項本文)。
  • 新設会社が承継する負債が資産を超過している場合(債務超過事業)は、資本金、資本準備金及びその他資本剰余金は0円となり、マイナス分は「その他利益剰余金△−−−円」と計上する(規則49条2項ただし書き)。
  • 分割型新設分割(以下「人的分割」という)において、分割対価の全部が新設会社の株式である場合には、新設会社の資本金の額は、分割会社の選択に従い、規則49条又は同50条の規定により定めることができる。そして、分割会社の株主資本等を引き継ぐ規則50条の規定による場合は、減少する分割会社の資本金の額を新設会社の設立時の資本金の額とすることができるが、分割会社については新設分割手続とは別に資本金の額の減少手続が必要となる(規則50条2項)。分割方式で人的分割を選択しても、資本金の額の減少の手続が必須というわけではない。
  • 2社以上の分割会社がそれぞれの事業に関する権利義務を新設会社に承継させる共同新設分割においては、分割会社Aが規則50条に従い、分割会社Bが規則49条に従うことも可能である。この場合の「資本金の額の計上に関する証明書」の記載例を掲げる(クリックすると拡大する)。

資本金の額の計上証明書会社法では、人的分割=物的分割+剰余金の配当(会社法763条12号ロ)と構成されており、会計処理の場面では規則49条の適用を選択できる。剰余金の配当については、分割対価である新設会社の株式を分割会社の株主に対して現物配当として交付する。なお、人的分割においても、通常の剰余金の配当と同様に、準備金の計上を要する(登記情報548号 2007.7 25頁参照)。


最後に、新設分割による株式会社の設立登記の登録免許税について触れておきます。この点については、過去ログ「吸収分割」で説明しましたとおり、登録免許税の額は、1.5/1000は適用の余地がないので、資本金の額×7/1000(これによつて計算した税額が3万円に満たないときは、申請件数1件につき3万円)とされています(登税法別表第一第24号(一)ト)。ちなみに、オンライン減税(租税特別措置法84条の5第2号)の適用を受けることができます。

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2011年09月01日追記



2011年6月30日に施行された「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律」では、新設分割の登記に係る登税法別表第一第24号(一)トが改正され、資本金の額×7/1000が明確にされました。



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