株式の一部の内容の変更 : 安達司法書士.comブログ

2010年10月07日

株式の一部の内容の変更

とある中小企業の常務さんから相談を受けました。『弊社は従業員持株会を組織したいと考えており、社長が保有する普通株式の一部を配当優先株式に変更した上で、その優先株式を持株会に譲渡することを計画しています。定款変更等の手続の具体的な進め方についてご教示願います』との内容。オーナー社長の相続税対策が主な目的のようです。


まず、本件会社は単一株式発行会社ですから、剰余金の配当について普通株式と内容の異なる種類の株式(「種類株式」といいます)を発行するには、株主総会における「定款一部変更の件」の承認決議を経て、その株式の内容と各発行可能種類株式総数を定めることが必要です(会社法108条2項)。


問題となるのは、同一種類株式については、各株主はその持株数に応じた扱いを受けるとする「株主平等の原則」(会社法109条1項)との関係です。本件では特定の株主(社長)の保有株式に限ってその内容を変更することから、持株数に応じた扱いということはできず、同原則に反し認められないことになります。ただ、同原則の趣旨が少数派株主の利益を保護する点にありますから、株主全員の個別の同意を得ることができるならば認めても差し支えないというのが、旧商法時代の実務上の取り扱いであり(「参考先例」参照)、会社法施行後も同様の取り扱いがなされています。


ー参考先例ー

普通株式を優先株式に変更することの可否(昭和50年4月30日民四第2249号民事局長回答)発行済の普通株式を優先株式に変更するには、会社と優先株式への変更を希望する株主との合意及び他の普通株主にとどまる者全員の同意があれば足り、本変更登記の申請書には、先の合意及び同意のあったことを証する書面を添付する取り扱いで差し支えない。

※「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容」の変更を一緒に申請する場合、株主総会議事録の添付が必要(商登法46条2項)


株主全員の同意についてもう少し触れておきます。株式の内容の変更に応ずる株主の同意はもちろんですが、その他の同一種類株主については、既述の株主平等の原則の趣旨からすれば、不利益を受ける場合に限って同意を取れば足りるとも考えられます。


この点、松井信憲氏(佐賀地裁判事/前・法務省民事局付)は、同氏の著書「商業登記ハンドブック」の中で、『同一種類に属する他の株主の「不利益が全くない」場合には、論理的には不要であろうが、実務的には、種類株式の内容は複雑であり、不利益が全くないといえるかどうか微妙なことから、紛争防止の観点からその同意を得るよう努めるべきであろう』とコメントされています。


『不利益の有無の判断を登記所に求めるのは避け、申請書に株主全員の同意書を添付すべき』といったニュアンスを感じてしまう…。

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