2011年12月14日
取締役1名会社の取締役増員
昨年から当ブログは、ブログタイトルからイメージされる内容とはかけ離れた(サブタイトルはそうでもないですが…)、鉄道撮影記を中心に更新しています。といっても、専門ネタを止めた訳ではないのでご安心ください。
先日、当方で設立した会社からある相談を受けました。当該会社(以下「本件会社」といいます)は取締役1名の株式会社ですが、新たに取締役を1名増員し、その新任取締役を代表取締役として選定したいというものです。役員選任手続の説明に入る前に、会社法施行から5年も経って今更ですが、株式会社の機関構成に関する基礎的な知識を確認しておきましょう。本記事の内容は取締役会設置会社には当てはまりませんので、念のため。
会社法は有限会社的株式会社を機関構成のベースに置いています。すなわち、原則として、株式会社の機関は株主総会と取締役のみであり(326条1項)、取締役は各自会社を代表します(349条1項本文、2項)が、会社は、次の方法のいずれかにより、取締役の中から代表取締役を定めることができます(同条3項)。ただし、代表取締役を定めると、その他の取締役は代表権を失うことになります(同条1項ただし書き)。
- 定款
- 定款の定めに基づく取締役の互選
登記申請時に互選書(商登法46条1項)と定款(商登規則61条1項)の添付が必要
- 株主総会の決議
さらに、会社法では、代表取締役を「株式会社を代表する取締役」と定義していますので(47条1項)、取締役が各自会社を代表するときは、登記実務上、各取締役につき、取締役及び代表取締役の就任による変更登記を要するとされました(平成18年3月31日法務省民商第782号通達参照)。これは取締役が1名の場合も同様です。
それでは、本件の役員選任手続について話を進めます。まず、株主総会において新任取締役を選任します。この後、代表取締役を選定するわけですが、本件会社の定款には、「取締役が2名以上あるときは、そのうちの1名を代表取締役として、取締役の互選によってこれを定める」旨の規定があります。したがって、就任を承諾した新任取締役と現任取締役の互選によって(▲選定方法2)、新任取締役を代表取締役に選出することになります。 これにより、現任取締役は代表取締役としての地位を失いますので、登記実務上、「退任」を登記原因とする変更登記を要するとされています(画像参照(クリックすると拡大します)。
なお、本件とは逆に、新任取締役ではなく、現任取締役を代表取締役として選定した場合は、登記実務上、新任取締役の就任による変更の登記のみで足り、代表取締役の重任登記を要しないとして取り扱われています。なお、この場合も代表取締役の選定を証する書面の添付は必要です。
余談ですが、結局本件は、定款を一部変更し、代表取締役の選定方法についての定めを削除して、各自代表でいくことになりました。
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