同族会社の利益相反取引 : 安達司法書士.comブログ

2020年01月20日

同族会社の利益相反取引

冬本番にもかかわらず、記録的な暖冬。京都新聞には「雪の金閣寺、この冬見られない?」と衝撃的な見出しが…。遅ればせながら、今年も当ブログをよろしくお願いします。


さて、新年一発目は、同族会社のオーナー一族(ABCDE)が所有する物件を会社(代表取締役A、取締役B、F)に売却する件についてです。


いうまでもなく、本件不動産の売買契約は利益相反取引に当たり(会社法356条1項2号)、取締役会の承認を得る必要があります(会社法365条1項)。


ここで問題なのが、承認決議に参加できる取締役はFしかいないことです。不動産の売主である取締役A及びBは、売買契約について特別利害関係を有する取締役であり、承認決議に参加できないからです(会社法369条2項)。


この場合、登記先例は、「取締役3名中特別利害関係を有しない取締役1名のみにより有効に取締役会決議をなし得る(昭和60.3.15民4第1603号民事局第4課長回答)」としています。念のため管轄法務局に照会したところ、差し支えない旨(以下の取締役会議事録様式を含む)の回答を得ました。


脚注番号を押すと脚注内容に移動します。

取締役会議事録

 令和2年〇月〇日[1]午前9時30分当会社の本店において、取締役1名(取締役総数3名)出席[2]のもとに、取締役会を開催し、下記議案につき可決確定した。

 なお、特別利害関係にあるA及びBは、本取締役会の決議に参加しなかった

1.不動産売買契約承認の件

 当会社の代表取締役A、取締役B、外3名で所有する物件を当会社が買受ける件について、下記のとおり承認する。

 1. 売買契約日  令和2年〇月〇日

 2. 売買代金   金×××××××××円

 3. 不動産の表示 (省略)

 以上の決議を明確にするため、この議事録を作り、出席取締役がこれに記名押印する。

 令和2年〇月〇日

 (商号)△△△株式会社 取締役会

  出席取締役 F [3][4]


脚注


  1. 取締役会の承認は売買契約後でも差し支えない(事後承認、東京高判昭和34.3.30)。
  2. 当該会社の監査役は会計監査のみを権限としており、取締役会への出席義務の適用がない(会社法389条7項、383条1項)。
  3. 取締役Fが個人実印を押印のうえ、市区町村発行の印鑑証明書を添付する。仮にFが代表取締役であれば、会社実印を押印のうえ、法務局発行の印鑑証明書を添付する。
  4. 会社の登記事項証明書の添付に代えて会社法人等番号を申請書に記載する。

最後に、取締役会議事録に添付する印鑑証明書についても少し触れておきます。

  1. 印鑑証明書は3か月以上前に発行されたものでも構わない。
  2. 印鑑証明書の原本還付はできない。取締役会議事録自体は還付できる。
  3. 登記義務者(売主)と議事録に押印した者が同一人であっても、印鑑証明書は2通必要である。

以上、この記事が何かしらお役に立てれば幸いです。

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