グループ内の利益相反取引 : 安達司法書士.comブログ

2020年08月17日

グループ内の利益相反取引

連日危険な暑さが続いています。コロナ禍の夏と言っても、感染対策のためのマスクで熱中症になっては元も子もありません。私は炎天下を一人で歩くときはなるべくマスクを外すようにしています。マスクを外す勇気も必要です。


さて、普段通りの生活が送れていた1月下旬、同族会社の利益相反取引についてお送りしました。今回はその続編ともいうべき内容で、同族会社グループ内の株式会社甲(代表取締役A、取締役B、C、D、E。以下、「甲社」という。)が所有する物件を株式会社乙(代表取締役B、取締役A、E。以下、「乙社」という。)に売却する案件です。


本件不動産の売買契約が利益相反取引に該当し、二つの会社の取締役会の承認が必要なことは言うまでもありません。


すなわち、Aが代表取締役を務める甲社においては、Aは甲社のために甲社を代表して取引するので、取締役会の承認は不要です。他方、乙社から見た場合は、乙社の取締役であるAは第三者である甲社のために取引するので、乙社にとっては利益相反取引に該当し(会社法356条1項2号)、乙社の取締役会の承認が必要です(会社法365条1項)。Aと同じ事がBについても言えます。


そして、甲社の取締役B、乙社の取締役Aは、特別利害関係人に当たり、当該取締役会の決議に参加できないと思われがちですが(会社法369条2項)、実は利益相反取引ではあるが特別の利害関係を有する取締役はいない、、、


と言うのも、直接利益が相反するのは甲社と乙社の取引であって、その取引によって取締役個人が利益を受ける場合ではないからです(登記研究632 平12・9参照)。念のため甲社の取締役会議事録様式を管轄法務局に照会したところ、差し支えない旨の回答を得ました。


脚注番号を押すと脚注内容に移動します。

取締役会議事録

 令和2年8月〇日[1]午前10時30分より、当会社の本店において取締役会を開催した。

  取締役総数5名  出席取締役数4名[2]

 なお、代表取締役Aは、海外出張先からテレビ会議システムにより参加した。[3]

 代表取締役Aが議長となり、本日の取締役会は、テレビ会議システムを利用し行う旨を述べ、出席者が一堂に会するのと同等に適時・的確な意見表明が互いにできる状態となっていることを確認した。続いて、議長は開会を宣し、定足数に足る取締役の出席があったので、本取締役は適法に成立した旨を告げた。

1.不動産売買契約承認の件

 当会社所有物件を、当会社の取締役Bが代表取締役を務める株式会社乙に売却する件について、下記のとおり承認する。

 1. 売買契約日  令和2年8月〇日

 2. 売買代金   金×××××××××円

 3. 不動産の表示 (省略)

 議長は、以上をもって、終始異状なく本日の議事を終了した旨を述べ、午前10時45分閉会した。

 以上の決議を明確にするため、この議事録を作り、出席取締役がこれに記名押印する。

 令和2年8月〇日

 (商号)株式会社甲 取締役会

  出席取締役 A [4]

    同   B [4]

    同   C [4]

    同   E [4]


脚注


  1. 取締役会の承認は売買契約後でも差し支えない(事後承認、東京高判昭和34.3.30)。
  2. 取締役Dは都合により欠席。監査役は会計監査のみを権限としており、取締役会への出席義務の適用がない(会社法389条7項、383条1項)。
  3. 電話会議の方法による取締役会の議事録を添付した登記の申請について(平成14年12月18日民商3044号民事局商事課長回答参照)。
  4. 取締役Aは会社実印を押印のうえ、添付情報の表示として「取締役会議事録(会社法人等番号 1×××-01-××××××)」の例により記載する(不登規則50条2項、48条1号)。他の取締役は、個人実印を押印のうえ、市区町村発行の印鑑証明書を添付する。

最後に、取締役会議事録に添付する印鑑証明書についても少し触れておきます。

  1. 印鑑証明書は3か月以上前に発行されたものでも構わない。
  2. 印鑑証明書の原本還付はできない。取締役会議事録自体は還付できる。
  3. 二つの会社に共通の取締役の印鑑証明書は1通で足りる。

以上、備忘録も兼ねて記しました。

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