2020年09月18日
管轄外本店移転(オンライン)
殺人的な暑さが続いていた8月末、大阪府堺市に本社を置く取締役1名の会社から東京への本店移転登記の依頼がありました。
そこで今回は、取締役会非設置会社における管轄外本店移転についてまとめてみました。いうまでもなく、管轄外本店移転の場合、旧本店を管轄する登記所と新本店を管轄する登記所の2か所で登記が必要です。
本店移転の決議機関
株主総会の決議によって定款の「本店の所在地」を変更し、本店の移転場所と移転時期を取締役が決定するのが一般的です。しかし、取締役会非設置会社の株主総会は、「株式会社に関する一切の事項」について決議をすることができるので(会社295条1項)、本店の移転場所と移転時期を株主総会で決議することもできます。その場合、議案は以下のとおりとなります。
臨時株主総会議事録
第1号議案 定款一部変更の件
議長は、業務の都合上、本店の所在地に関する規定である定款第3条を下記のとおり変更したい旨を述べ、その賛否を議場に諮ったところ、満場一致をもってこれを承認可決した。
記
(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を東京都中野区に置く。
第2号議案 本店移転の件
議長は、前号議案の承認に伴い、当会社の本店を下記のとおり移転したい旨を述べ、その賛否を議場に諮ったところ、満場一致をもってこれを承認可決した。
記
本店移転先 東京都中野区〇〇一丁目△番△号
移転の時期 令和2年9月12日
登記すべき事項
新本店管轄登記所宛ての申請書の登記すべき事項が簡素化されています(平成29年7月6日民商第111号)。いつ、どこから移転したのか、これだけです(記載例は▼)。これは旧本店管轄登記所で本店移転と商号変更、目的変更、役員変更を一括申請した場合でも同じです。
「登記記録に関する事項」
令和2年9月12日大阪府堺市堺区〇〇一丁△番△号から本店移転
印鑑届書
- 新本店管轄登記所宛ての申請書(該当箇所の入力例▼)と一緒に代表取締役の印鑑について印鑑届書を提出します。なお、登録印鑑を変更しない限り、代表取締役個人の印鑑証明書の添付は不要です(平成11年4月2日民四第667号)。
- 会社法人等番号は、最初の4桁を含むすべての数字が新本店管轄登記所に引き継がれます。したがって、印鑑届書に現在の会社法人等番号を記載すればよいことになります。
印鑑届出の有無 〇 無 ◉ 有※ 管轄登記所に別途提出
オンライン申請の流れ
管轄外本店移転は、いわゆる同時経由申請(商登51条1項2項)を行う必要があります。
旧本店管轄登記所宛ての申請書の入力事項のうち、「経由の有無」について「有」を選択します。「管轄登記所」欄の入力は不要です。−画像参照(クリックすると拡大します)−
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新本店管轄登記所宛ての申請書の入力事項のうち、「申請先登記所」欄には、新本店の管轄登記所ではなく、経由する旧本店の管轄登記所を設定します。「経由の有無」について「有」を選択し、「管轄登記所」欄に新本店を管轄する登記所を入力します。−画像参照(クリックすると拡大します)−
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本店移転の2件の申請書を選択し、「申請データ送信」ボタンをクリックすると、「送信前申請一覧」画面が表示されます。「すべて選択」ボタンをクリックし、「順番」欄に「1、2」と入力後、「送信」ボタンをクリックします。−画像参照(クリックすると拡大します)−
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新本店管轄登記所宛ての申請書の「申請先登記所」欄に新本店の管轄登記所を設定すると、「登記所エラー」となります。「送信不可」画面(クリックすると拡大します)の「OK」ボタンをクリックし、改めて「申請先登記所」欄に旧本店を管轄する登記所を設定します。
以上、本記事が少しでもお役に立てば何よりです。
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